劉慈欣『三体』三部作の「外伝」。宝樹『三体X』と劉慈欣『三体0』を読んだ。『三体…
劉慈欣『三体』三部作の「外伝」。宝樹『三体X』と劉慈欣『三体0』を読んだ。『三体X』は三部作の続編に近い外伝だが、続編としてうならされた。『三体0』は、三部作とはほぼ関係ないが、そのリアリズムには、SF小説の軍事情報の撹乱としての役目を感じる。 JRF 2026年6月28日 『三体X - 観想之宙』(宝樹 著, 大森 望 & 光吉 さくら & ワン チャイ 訳, 早川書房, 2022年7月) https://www.amazon.co.jp/dp/B0FCM683B3 『三体0【ゼロ】 - 球状閃電』(劉 慈欣 著, 大森 望 & 光吉 さくら & ワン チャイ 訳, 2022年12月) https://www.amazon.co.jp/dp/B0F13H72SW JRF 2026年6月28日 原著は、『三体0』は2004年に、『三体X』は2011年に、重慶出版から出版された。 劉慈欣『三体』三部作は直近で [cocolog:96039884](2026年6月)で読んでいる。買った当時はよく知らなかったが、同じ『三体』と付いていたので、すでに買っておいたのを読んだカッコウになる。 『三体X』は三部作の続編に近い外伝で別の作者による。『三体0』は劉慈欣自身によるものだが、三部作との関係は薄い。 以下、ネタバレ感想。 JRF 2026年6月28日 ……。 『三体X』について。 読む前は二次創作の外伝ということで、三部作の各時代から人物を抜き出して、その動静を描いたものなんじゃないかと思っていたが、基本的にそうではなかった。三部作のラストのほんの手前から、雲天明を主人公として、一貫した時間の流れの物語の続きがあった。ほぼ三部作の続編である。 濡れ場っぽいものはあり、グロテスクな描写もあることから、三部作よりは、対象年齢が高めである。 JRF 2026年6月28日 三部作の様々な謎の解決などもあるが、解決を超える要素もある。例えば、程心たちが最後にいた小宇宙のようなものは、十次元のスーパーパワーでないと生み出すことができず、程心がそこから命懸けで出ていったのは誤解に基づくものになってしまっていた。これは三部作のファンにとってはツライ描写である。しかし、それも是とさせるような作家としてのパワーは感じた。 雲天明がスーパーパワーを「授け」られるのは、「ウルトラマン」的である。その辺りは古いアイデアと見るのか、古典SFへのオマージュと見るのか、人それぞれだと思う。 JRF 2026年6月28日 私は続編としてとてもおもしろかった。劉慈欣本人が十年以上たってこれを書いたと言われれば信じただろう。 ところで、「雲[クラウド]コンピューティング」という言葉(悪趣味)には笑った。この辺が2ch的二次創作由来の要素があるというところなのだろう。 JRF 2026年6月28日 ……。 『三体0』について。 『三体0』は劉慈欣自身によるもので、いちおう三部作の前に世に出た前日譚になるのだが、丁儀という人物が同じ役割で『三体』にも出てくるというだけで、『三体』とはほぼ独立して構想されたもので外伝とも言いがたい。 話題の中心となる「球電」「球体閃電」は、日本では、「火の玉」「人魂[ひとだま]」として有名な「自然現象」で、実際にある現象とされ、劉慈欣自身は見たことがあるようだ。私は、幼いころ、いっしょにいた私の周りの人たちがそれを見た…と言ってるのに、私は見なかった…ということがあったのを覚えているくらいだ。 JRF 2026年6月28日 その現象が、マクロ電子によるものだというのが、本作の「嘘技術」なわけだが、しかし、とてもリアリティがあって、科学的で、到底、嘘のようには思えない。三部作よりはエンタメ性に劣るという評価に本作はなるとは思うが、しかし、リアリズムという点では本作にも本作の良さがあるとせねばなるまい。私は楽しめた。こういう「SF小説」は、かつてならば、軍事情報の撹乱としての役目もありえたのかもしれない。 JRF 2026年6月28日