伊藤計劃『虐殺器官』を読んだ。「痛み」を「感じる」のを抑えながら、「痛い」と「知…
jrf> 伊藤計劃『虐殺器官』を読んだ。「痛み」を「感じる」のを抑えながら、「痛い」と「知覚する」ことは妨害しない…それは Gemini さんによると不可能ではないらしいのだが、その現実の脳理論を近未来軍事技術に据えるその筆致にはさすがのリアリティがある。 『虐殺器官』(伊藤 計劃 著, ハヤカワ文庫JA, 2012年4月) https://www.amazon.co.jp/dp/B009DEMA02 https://7net.omni7.jp/detail/1106439492 元は2007年6月に単行本として出たものが2010年2月に文庫化され、それを元にKindle化されたものを読んだ。 Metal Gear Solid というコナミが出してるゲームのシリーズがあって、そこの武器がまるで「予言」のように現実の戦場に登場すると確かどこかで言われていて、それに興味を持って、一番の未来を描いているらしい Metal Gear Solid 4 (MGS4)に私は関心を持っている。その小説版を書いた伊藤計劃さん(故人)に興味を持っていた。そのゲームはトシを取った私の反射神経ではもうできないだろうが、そのリメイク版が出ることに一応期待しつつ待つとして、その小説版ではなく伊藤さんの他の作品にあたってみた。はてなーだったらしいのも昔興味を抱いた理由の一つだったのかもしれない。 『虐殺器官』は2001年の911テロで大きく社会が変わってしまったあとの、戦争というか軍人による「要人暗殺」を描いている。そのあたり、昨今のアメリカのベネズエラのデルタフォースを使った要人逮捕もうっすら連想させる。 しかし、私にとって大事なのは911テロとの文脈だ。2001年の911テロで私は狂った。それをおくとしても、そのテロの前のネットの楽観的雰囲気は覚えている。PKOなど「国連軍」で国際平和が守れるといった幻想は小沢一郎さんなどと私も共有していた。ひょっとしたら大きな戦争はもう起きないのではないか…みたいな空気もあったと思う。そこから911テロが起きてテロとの戦いが叫ばれ、ネット監視なども当然とされる雰囲気ができた。テロの前後で、落差は確かにあった。311でも、宇露戦争でも、またいろいろ変わるのだが。 ……。 ちょっとだけ引用していくが、Kindle 版なので紙の本とはページ数が違うかもしれない。 ……。 本ではユーモアがあって、それが緊張感のある物語を読みやすくしている。「フジワラという名前のトウフ・ショップ」(p.34, 『頭文字D』が元ネタ)とか「まさかのときのスペイン宗教裁判だ」(p.268, 私の気に入りの『モンティ・パイソン』のスケッチ)とかある。私はおもしろいのだが、ある意味、完全シリアスを求める人はちょっと抵抗があるのかもしれない。 ……。 >イヌイットはね、雪を表すのに百の語を持っているんですよ。<(p.108) でも、このトリビアは誇張で正しくないことが本では言われる。 私は拙著『宗教学雑考集』《メタ論理: 演驛と帰納》で日本で有名な「モンゴルの「馬」という言葉はいっぱいある」ことをトリヴィアとして挙げたのだが、それも誇張なのかもしれないな…。どうなんだろ? Gemini さんによると、モンゴルの馬もイヌイットの雪と同じ構図だが、確かに語彙自体は多くあるらしい。